「改ざんできない」「永遠に残る」は本当か?
ブロックチェーンについて、「改ざんできない」「一度書かれたデータは消えない」といった特徴が強調されることが多い。では、たとえば映画1本分の動画データをブロックチェーンにそのまま保存できるのだろうか?
結論から言えば、それは現実的に不可能である。
ブロックチェーンが記録しているのは“要点”だけ
ブロックチェーンは、データの中でも特に重要な「要点」だけを記録する設計になっている。たとえば、金融取引の履歴や契約書の署名情報といった、小容量かつ改ざんが許されない情報はブロックチェーン上に記録される。
一方で、大容量の画像・動画・音声などを直接格納するには、ブロックチェーンの構造・容量・コスト面の制約が大きすぎる。
実際のデータ保存は分散型ストレージで行う
この制約を補うために使われるのが、IPFS(InterPlanetary File System)やSwarmといった分散型ストレージ技術である。
たとえばNFT(非代替性トークン)では、トークン自体はブロックチェーン上に記録されるが、画像や動画などのメディアデータはIPFSのような外部ストレージに保存されている。多くの場合、トークンには「このURLのデータがNFTの中身です」といった情報が含まれているだけである。
つまり、URL先のデータが消失すれば、NFTとしての価値も大きく損なわれることになる。
「ブロックチェーンに保存されるのは証明だけ」
ブロックチェーンに残るのは、「データが存在していた証拠」や「改ざんされていないことを証明する情報(ハッシュ値)」であり、データ本体ではない。
そのため、「ブロックチェーン=永久保存」は誤解を招く表現である。正しくは「証明情報は残り続けるが、データ本体は別に管理されている」というのが実態である。
分散ストレージも万能ではない
分散型ストレージも万能ではない。IPFSのように、複数のノードにデータを分散して保存する仕組みは確かに存在するが、実際には誰かがホスティングし続けなければデータは失われる。
つまり、分散型といえども、維持には管理者やユーザーのアクティブな関与が不可欠であり、「完全に自律的に永続する」というわけではない。
ブロックチェーンが苦手なデータとは?
ブロックチェーンに保存できるデータの容量は非常に限られている。一般的には数バイトから数キロバイト程度が上限であり、数百MB~GB単位のデータを格納することは現実的に困難である。
加えて、保存にかかる**ガス代(手数料)**も膨大になるため、仮に技術的に可能であっても、経済的には非効率である。
結局、何をどこに保存するべきか?
最も効果的な運用方法は以下の通りである。
- ブロックチェーンにはハッシュ値や検証情報だけを記録
- 実データは分散型ストレージなどに保管
- 必要に応じて、その両者を連携させる設計にする
このように、ブロックチェーンを活用する上では、「何をブロックチェーンに残すか」「どこに実体データを置くか」の設計方針が極めて重要となる。
保存設計にはバランス感覚が求められる
最後に重要なのは、耐久性・分散性・コストのバランスである。
すべてをブロックチェーンに頼るのではなく、それぞれの技術が得意とする役割を見極め、適材適所で組み合わせることが、実用的かつ持続可能なシステム設計につながる。